Moanri’s blog

God only knows what I'd be without you.

Light houseで。

毎週土曜日のお昼は、尊敬する先輩とロシア語の練習を一時間、Light Houseと呼ばれる彼の住む寮で、してもらっている。

 

土曜日の昼という性格上、平日の疲れだったり金曜日のвечеринка(パーティー)からの二日酔いだったりで、最高のパフォーマンスで臨めているかというと、いささか疑問だが、一時間みっちりとロシア語を練習しているだけでも、言語習得には大きく役立つ。

 

今週は、今学期授業で読んだトルストイのショートストーリー(Бог правду видит да не скоро скажет: God Sees the Truth, But Waits)の要約をする練習をした。アクショーノフという商人の主人公が、殺人の濡れ衣を着せられて26年間の牢獄生活の果てに人生の意味を見失って命を落とすという、いかにもロシア文学らしいアンニュイな作品だったが、個人的にますますロシア文学の面白さを認識する一作品になった。

 

限られた語彙で試行錯誤しながら、ロシア語で要約を話す。英語を学びたての頃、僕にとって英語という言語がこうであったことを思い出せば、この歯痒さの先に光を見出せる。2年間アラビア語をとっていたという先輩も辛抱強く練習に付き合ってくれた。この場を借りても、感謝せねばならない。

 

セッションが終わった後、軽くライフについて話す。来学期のこと、ロシア文学のこと。卒業を来年に控える彼の目には、自分が湯船の様に浸かっているコレッジバブルのその先を見通す鋭さがある。〜やってみて初めて、自分にとってのその経験の価値がわかる。なぜなら、その価値は挑戦した自分への報酬なんだから〜話すたびに、映画のセリフのようなコメントをくれる彼は、English Major。沢山の読書と共に、言葉も価値観も磨いてきたのだろう。自然と頷いてしまう。朝鮮系ウクライナ人でロシア語が母国語、カルフォルニアロングビーチ出身である彼はクリスチャンでもあり、その文学への勤勉さと相まって、自分よりも1年だけ先に産まれた人間には見えないオーラを纏っている。ショートストーリーの主人公も、獄中生活の中で読書と宗教に自分を見出し、獄主もが信頼する人物に成長する姿が描かれていたのは、たまたまだろうか。こうして、Light Houseでの時間は、思慕と鍛錬そして自分への刺激のために流れてゆく。

 

 

起きた時から脱水気味の体に水を流し込みながら、Light Houseのある小高い丘を下っていく。ニューイングランドのまだ冷たい3月の風が、磨き立ての身体をくすぐった。